HIV感染症/エイズの解説 症状や感染経路・検査や治療について
HIV/エイズって何?
まずはじめに。ご存知でしたか?
HIVとエイズについて~
「HIV」と「エイズ」は違います
「HIV」とは「エイズウイルス」のことで、正式には「ヒト免疫不全ウイルス」といいます。
ヒトに感染すると、免疫力を低下させてしまうウイルスです。
「HIV」 に感染し、治療をせずにいると、免疫力がだんだん弱くなり、
数年~10年で健康な人であれば何ともない菌やウイルスで 様々な病気がおこります。
その病気が、「エイズ指標疾患」 とされる病気にあてはまると、「エイズを発症した」 と診断されます。
エイズ:後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)、Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS
- 免疫力(めんえきりょく)とは?
- 体内に侵入した菌やウイルスなどから、自分自身の体を守る力のことをいいます。
正しい知識の大切さ
HIV/エイズについて、正しい知識を持っていないために、むやみに怖さばかりが先立っていませんか?
- ・どんなことで感染するのか
- ・どうしたら予防できるのか
- ・治療法が進歩し、他の慢性疾患と同様、健康を回復したり維持することができるようになったこと
ぜひこれを機会に、HIV/エイズについて理解を深め、他のSTD(性感染症)と同じく、「誰にでも関係のある病気」 であることを知ってください。
動画でわかる
「HIV感染症/エイズ」
ー この章の内容を、動画でもご覧いただけます ー
第1章 HIV/エイズって何?
- ・HIVとエイズについて(56秒)
- ・正しい知識の大切さ(33秒)
どうしたらうつるの?(HIV/エイズの感染経路)
HIVはどのようにして感染するのでしょうか
感染のしくみについて
HIV(エイズウイルス)は、感染した人の血液、精液(さきばしり液含む)、腟分泌液、母乳といった体液に存在します。
これらが相手の粘膜部分(主に口の中、ペニス、尿道、腟、直腸など)に接触することで、感染の可能性が出てきます。
なお、汗、涙、だ液、尿、便などの体液の接触による感染の可能性はありません。
- 皮膚(ひふ) と 粘膜(ねんまく) の違いって?
- 人間の皮膚は通常、身体を守るバリアや鎧(よろい)のような役割を果たしているので、健康な皮膚にHIV(エイズウイルス)を含む血液が多少付着した程度ではうつりません。しかし、大きな傷口や粘膜(男性の尿道口付近、女性の腟周辺、口の中、肛門や直腸の粘膜など)には、皮膚というバリアがないため、HIVが感染しやすくなるのです。
性行為の時のコンドームは、接触する粘膜部分にバリアをかけてあげるということなのです。
- 他のSTD感染も要注意!
- なお、他のSTD(性感染症)に感染していると、粘膜に炎症を起こしたり傷ついていたりするため、HIVの感染率は数倍増加するといわれています。
感染経路
HIVの主な感染経路は、以下のように3つあります。
日本国内では、性行為による感染が最も多くなっています。
性行為による感染
あらゆる性行為(セックス・アナルセックス・オーラルセックス)により感染の可能性があります。
HIV(エイズウイルス)が粘膜や傷口から血液内に入って感染します。
- HIVはどうしたら感染するの?(性行為編)
- あらゆる性行為により感染するといっても、具体的に 「何をどうしたら」 感染の可能性があるのか、気になるところですね。
セックス・アナルセックス・オーラルセックス…あらゆる性行為ごとにご説明します。
血液による感染(特に麻薬など、
注射器・針の使いまわしによる感染)
麻薬や覚せい剤の 「まわし打ち」 で感染する可能性は非常に高くなっています。
(まわし打ちでなくても、ドラッグを使用しての性行為は無防備なことが多く、非常に危険です。)
- 輸血による感染を防ぐため、
HIV検査目的の献血は絶対にやめましょう! - 献血された血液については、輸血される方の安全のために、さまざまなチェックを行います。
しかし、HIV感染初期の人が献血された場合は現在の技術水準でも完全にチェックすることはできず、すり抜けてしまう可能性がゼロではありません。また、献血者ご本人へはHIV感染は通知されません。
HIV検査目的の献血は、輸血される方の安全を第一に考え、絶対にやめましょう。
なお、手術時に自分の血液をあらかじめ採血して使う 「自己血輸血」 は、感染の心配はありません。
母子感染
まず妊娠したら、産婦人科で受ける 「妊婦検診」 で、HIV検査を受けることができます。
もし、母親が感染していることがわかっても、妊娠中から医師の治療を受けることにより、赤ちゃんに感染しないように対策をとることができます。
- 母子感染を防ぐための妊婦検診、そして治療について
- 母子感染を防ぐための治療だけでなく、HIVに感染している男性が子供を持ちたい場合、人工授精などによる妊娠も可能になってきています。
日常生活における感染は
あるのでしょうか?
HIVはヒトの体の中で生き続けることができるウイルスですが、体の外、つまり空気中や水の中などに出てしまうと、感染力をなくします。
また、HIVを多く含むのは血液、精液(さきばしり液含む)、腟分泌液、母乳といった体液であり、汗、涙、唾液、尿、便などの体液の接触による感染の可能性はありません。つまり、通常の社会生活の中で感染することはありません。
- 日常生活で気になる事例
- 日常生活の中では、他人と同じものを共有していたり、知らないうちに人が使ったものを後から使っていることもあります。よくお問い合わせをいただく事例をご紹介いたします。
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「HIV感染症/エイズ」
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第2章 どうしたらうつるの?
- ・感染のしくみ(16秒)
- ・性行為による感染(42秒)
- ・血液による感染(15秒)
- ・母子感染(28秒)
- ・日常生活について(1分23秒)
HIV/エイズに感染したらどうなるの?症状は?
HIVに感染したら、体の中ではどのような変化がおこっているのでしょうか
まずは、体を守る免疫の
しくみについて
ヒトの体には、病原体を排除するための、免疫(めんえき)というしくみがあります。
血液の中の白血球の仲間たちがこのしくみを支えており、その中でも 「CD4陽性細胞」 というものが司令官の役割を果たします。病原体が侵入しても、司令官は仲間たちに様々な指令を出して排除していきます。
では、HIVはヒトの体に
どのように感染するのでしょうか
血液、精液(さきばしり液含む)、腟分泌液などに含まれているHIV(エイズウイルス)は、傷口や粘膜から血管の中へ入っていき、 血管の中に入ったHIVは、大切な免疫の司令官であるCD4陽性細胞にくっついてしまいます。
くっついたHIVは、CD4陽性細胞の中を利用し、増殖していきます。
そして、もとのCD4陽性細胞は壊れてしまい、新しくできたHIVは次のCD4陽性細胞にどんどん感染していきます。
HIVに感染した後、どのような
経過をたどるのでしょうか
ここでは、HIV(エイズウイルス)に感染し、治療をしなかった場合について説明します。
感染初期
感染から2〜4週
- ・発熱
- ・のどの痛み
- ・だるさ
- ・筋肉痛
といったインフルエンザのような症状が出る場合があります。
HIVが急激に増殖するため、症状が出ることがあります。
無症候期
数年〜10年ほど症状が無い
期間が続きます
ただし、期間には個人差があり、
1〜2年以内にエイズを発症する場合や、長期間発症しない場合があります。
この期間も免疫力は少しずつ低下していきます。
無症状の期間も、CD4陽性細胞の破壊が進み、免疫力が少しずつ低下していきます。
エイズ発症期
- ・しつこい下痢
- ・ひどい寝汗
- ・理由のない急激な体重減少
などの症状があらわれます。
日和見(ひよりみ)感染症や悪性腫瘍、神経障害など、様々な病気を引き起こします。
免疫力の低下が原因となり、健康な人では問題ない種類のカビ・原虫・細菌・ウイルスなどによって、様々な病気を引き起こします。
これらの病気が、エイズ指標疾患(23種)にあてはまると、エイズ発症(後天性免疫不全症候群)と診断されます。
上記の流れは、HIV感染に気づかず、治療を行なわなかった場合の流れです。治療法は進歩しており、エイズ発症を抑えることができるようになっています。
HIV感染していても、検査を受けて早期発見することができれば、その分適切な治療につなげることができます。
HIV/エイズ検査について
HIV検査はどのように行うのでしょうか
HIV抗体スクリーニング検査とは?
HIVに感染しているかどうかを調べたい時は、血液を採取しHIV抗体スクリーニング検査を行ないます。
抗体とは、菌やウイルスが体内に侵入すると、それに反応して作られる物質です。
HIV抗体スクリーニング検査を受ける時期について
ご存知でしょうか?
HIV抗体スクリーニング検査は、感染の可能性があった日からすぐにできる検査ではありません。
なぜなら、HIV抗体が体内にできて検出されるようになるまでに、少し日数がかかるからです。
この検査をしても反応が出ない時期をウィンドウ・ピリオドといいます。
HIVに感染すると、通常4週間後くらいから血液中でHIV抗体が検出されるようになりますが、
個人差もあり4~8週間くらいかかる人もいます。上記の内容から、確実に「陰性(-)感染していないこと」を確認したい場合は、もう少し余裕をみて3ヵ月以上経過してから検査を受けることが、国のガイドライン上で示されています。
では、3ヵ月たってからの検査でないと意味がありませんか?
そのようなことはありません。
感染している場合は4週間後くらいから 「陽性(+)」 と出る可能性があるので、感染の機会から3ヵ月以内であっても検査を受ける意味はあります。ただし、確実に陰性(-)を確認したい場合は、3ヵ月以上経過してから改めてHIV抗体スクリーニング検査を受けてください。
不安が強くて3ヵ月は待てない、という方は、以下の表を参考にしていただき、検査を受ける時期について検討してみてください。
2段階の検査 ~ スクリーニング検査と確認検査
HIVに感染していることを確定させるまでには、2段階の検査を行ないます。
それぞれの検査の特徴を活かし、確実な検査結果を出す仕組みになっています。
1段階目のスクリーニング検査は「陽性(+)の人を逃してはならない」(つまり偽陰性を出さない)という目的を持った検査のため、非常に感度が高くなっており、陽性の可能性がある方までを「陽性(+)/要確認検査」と判定します。
よって、感染の機会から3ヵ月経過後のスクリーニング検査で「陰性(-)」となった人は、感染していないことが確定となります。
スクリーニング検査で「陽性(+)/要確認検査」となった人は、違う検査法を用いた2段階目の確認検査を行い、本当にHIVによる反応であるかどうか確認します。この確認検査でなお「陽性(+)」が出れば感染していることが確定となります。
- 確認検査でHIVに感染していることがわかったら…
- 医療機関にて専門医の診療を必ず受けてください。HIVを体内から完全に排除することはできませんが、治療によって他の慢性疾患と同様、健康を回復したり維持したりすることができるようになっています。(詳しくは [05] 治療と生活について で説明)まずは、現在の健康状態の把握を行い、今後の健康管理と治療の相談を行なうことが大切です。
HIV検査が受けられるところ
HIV検査は、様々な形で受けることができます。
それぞれの特長がありますので、ご自身に合った方法を選択してください。
保健所など
保健所などでは、無料・匿名でHIV検査を受けることができます。
各自治体が主となり、特設の検査場が開設されている場合もあります。
曜日や時間を決めて行なわれていたり、予約が必要なこともあるため、事前に確認を行なってください。
検査の種類 | 料金 | 検査実施日 |
---|---|---|
行っている検査の種類は、各保健所により異なります。 ・通常検査(結果は約1週間後) ・即日検査(結果は約30分~数時間後) |
無料 | 各保健所によって異なります。 |
医療機関
婦人科・泌尿器科・性病科などの病院・クリニックや、エイズ治療拠点病院などでHIV検査を受けることができます。ただし、どの医療機関でもHIV検査が実施されているということではありませんので、事前に確認を行なってください。
検査の種類 | 料金 | 検査実施日 |
---|---|---|
行っている検査の種類は、各医療機関により異なります。 ・通常検査(結果は約1週間後) ・即日検査(結果は約30分~数時間後) |
約3,000円~ 7,000円 |
診療時間内 |
郵送検査キット
保健所や医療機関へ行く時間がない人や、人と対面して受ける検査は抵抗がある…という人は、自宅から検査物を送る、という方法でHIV検査を受けることもできます。検査は、保健所や医療機関などと同じく、登録衛生検査所で実施します。
検査の種類 | 料金 | 検査実施日 |
---|---|---|
・通常検査 (結果は検査物到着後、1~5日後) |
約5,000円 | いつでも可能です |
HIV検査をうけることについて
「○○という行為をしましたが、感染の可能性はどれ位の確率ですか?」
「不安で仕方ないのですが、感染がわかるのが怖くて検査が受けられません…」
検査を受けて感染していなかった人は、不安がなくなり、今後のセーファーセックスなど、予防を考える良い機会になると思います。もし、感染していることがわかった人も、現在の治療法は進歩しています。早くわかればその分効果的に、専門病院における体調管理や治療を受けることができます。
ほんの少し、勇気を出して検査を受けてみませんか。
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動画でわかる
「HIV感染症/エイズ」
ー この章の内容を、動画でもご覧いただけます ー
第4章 検査について
- ・HIV抗体検査とは(44秒)
- ・HIV抗体検査を受ける時期について(32秒)
- ・2段階の検査(1分26秒)
- ・HIV抗体検査はどこで受けることができるのでしょうか(1分23秒)
- HIV/エイズ検査の解説
もっと詳しく
HIV/エイズの治療と生活について
感染がわかった後はどのような生活になるの?
治療法は進歩しています
一昔前とは違って治療法はとても進歩しており、HIVに感染してもエイズ発症を抑え、健康を回復したり維持することができます。そして、感染していない人とほぼ同じ寿命を全うできるようになっています。
(例:20歳で治療を始めた人の平均寿命は78歳)
体内からHIV(エイズウイルス)を完全に排除することはまだできませんが、治療でウイルス量を抑えれば、他の人にうつさない状況になるので、1990年代頃の「死に直結する病気」からずいぶん変化しています。
日本国内におけるHIV感染症/エイズの治療は、全国各地に約370~380施設ある「エイズ治療拠点病院」等で行なわれます。
国立国際医療センター(エイズ治療・研究開発センター(ACC))を頂点とし、国内を8つのブロックに分け、ブロック拠点病院>各県の中核拠点病院>拠点病院というピラミッド状の体制が組まれています。
具体的な治療の内容について
HIV感染症の治療は、HIV(エイズウイルス)の増殖をおさえる、「抗HIV療法」が主なものとなります。
抗HIV療法では、HIVの増殖をおさえる「抗HIV薬」を使用します。抗HIV薬は、HIVの増殖をおさえてウイルス量を減らしていきます。ウイルス量が減ってくると、CD4陽性細胞数も増え、体の免疫力が回復します。
抗HIV療法では、効き方の異なる複数の抗HIV薬を1日に1~2回、服用します。1日1回1錠の服用ですむ薬もあります。ただし、薬は決められた時間に正しく飲む必要があります。
薬の飲み忘れが続くと、HIVはその薬が効かない耐性ウイルスとなり、治療が困難になることがあるので注意が必要です。
また最近では、体の中で長期間作用する注射剤が登場しています。1~2ヵ月に1回、または6ヵ月に1回の投与で治療できるため、毎日服用する負担がなく、飲み忘れのリスクを避けられます。
抗HIV療法は、感染が分かればなるべく早く始めた方が良いといわれています。
早く始めた方が健康を維持しやすく、体内のウイルス量が減ることで、他の人へ感染させるリスクも低くなります。
それだけでなく、ウイルス量が検出限界値未満の状態を6ヵ月以上維持すれば、性行為を通じて他の人に感染するリスクはゼロとなることが分かっています。(もううつらない「U=U」とは)
このように、HIV感染症の治療はなるべく早くから継続して行なうことが大切ですが、長い期間治療を続けていくうちに、薬の副作用や生活環境の変化など、様々な問題に出会います。医師に任せきりではなく、自分の生活パターンなどを考慮し、自分自身が積極的に治療方針の決定に関わることも大切です。
生活はどうなるの?
HIVに感染したことがわかっても、今までの生活を急に変える必要はありません。
HIVに感染しても、名前や住所など個人を特定できる情報が国などに報告されることはありません。
(感染症に関する法律に基づき、医療機関から 年齢・性別・都道府県・推定される感染原因など が報告されます)
直接的に個人情報を扱うことになる ・医療従事者 ・助成制度利用の際の自治体職員 ・健康保険事務を取り扱う職員 などは
各種法律により守秘義務があり、プライバシーは厳重に保護されます。
経済的な面も気になりますが、HIV感染症の治療が始まると、様々な助成制度を利用することによって、
医療費の自己負担額を減らすことができます。
- 様々な助成制度があります
-
- ・高額療養費(付加給付金)
- ・身体障害者手帳
- ・自立支援医療
- ・重度障害者医療…など
少し難しく感じるかもしれませんが、これらの助成制度は、医師や看護師、陽性者支援のNPO団体などで相談することができます。
また、ソーシャルワーカー(患者の心理的・社会的な問題の解決や調整を援助する専門員)という心強い存在もあります。
HIV/エイズの予防について
感染を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか?
それぞれの感染経路に対する予防
第2章でも触れましたが、HIVの主な感染経路は、以下のように3つあります。
日本における感染経路は、ほとんどが性行為によるものとなります。
性行為による感染を予防するためには
あらゆる性行為(セックス・アナルセックス・オーラルセックス)により感染の可能性がありますが、コンドームを行為の最初から最後まで正しく使うことにより、セーファーセックス(安全なセックス)が可能になります。
これは、HIVに限ったことではなく、他のSTD(性感染症)にも共通の予防法となります。
血液による感染(特に麻薬など、
注射器・針の使いまわしによる感染)を
予防するためには
麻薬や覚せい剤の 「まわし打ち」 で感染する可能性は非常に高くなっています。
注射器具の共用は決して行なってはいけません。
ちなみに、まわし打ちでなくても、ドラッグを使用した上での性行為はセーファーセックスの意識が無くなりコンドームを使用しないことが多いため、非常に危険です。
- 医療機関の注射器具は?
- HIVだけでなく、他の様々な感染症を防ぐためにも、医療機関の注射器具は全て使い捨てのものが使われており、安心です。
母子感染を予防するためには
妊娠したら、産婦人科で受ける「妊婦検診」で、HIV検査を受けることができます。
もし、母親が感染していることがわかっても、
医師の指示のもとに予防治療薬の服薬・帝王切開による出産を行い、母乳を避けて人工授乳を行なうことにより、赤ちゃんに感染しないように対策をとることができます。
これらの対策により、母子感染の確率は1%以下になってきています。
新たなHIV予防法「PrEP」「PEP」
PrEP(プレップ)とは
PrEPは、新たなHIV予防法の一つです。
曝露前予防(Pre-exposure prophylaxis)の略で、感染リスクのある行為の前にHIV治療薬を飲んでおくことで感染を防ぎます。
HIV感染リスクが高い場合に勧められている方法です。
- ・性行為の頻度が高い
- ・パートナーがHIV陽性
- ・不特定の相手とコンドーム無しの性行為をする
など
薬の飲み方は、1日1回1錠を毎日飲む「デイリーPrEP」と、性行為の前後に服用する「オンデマンドPrEP」の2通りあります。
安全にPrEPを始めるには、そもそもHIVやB型肝炎に感染していないか調べる検査と、薬を飲んでも大丈夫か腎機能などを調べる検査が必要です。
国内でも一部の医療機関でPrEPの処方を受けることができます。
PEPとは
PEPは、曝露後予防(Post-exposure prophylaxis)の略で、HIV感染リスクのある行為や出来事の後に、緊急的にHIV治療薬を飲むことで、感染を防ぐ方法です。
感染の可能性のある機会の後、72時間以内に服用を始める必要があります。
従来より医療者の針刺し事故の際の予防として使われています。近年では、性行為後の予防として処方されることも増えてきています。
HIVに感染している人も
予防が必要です
HIVに感染している人も、自分の健康を守り、治療の効果をあげるために予防が必要です。
また、免疫力が低下しているため、他の感染症にもうつりやすく、出てくる症状も重くなることがあります。
つまり、感染している人も、感染していない人も、全ての人にセーファーセックスは大切なことなのです。
もううつらない「U=U」とは
HIV予防の新たなメッセージとして「U=U」があります。
Undetectable(検出限界値未満)=Untransmittable(感染しない)の略です。
簡単に言うと、「HIVに感染していても、治療でウイルス量をおさえれば、他の人に感染しない」という意味です。治療が、他の人への予防にもなるのです。
そのため、早く検査をして、早く治療することは、ご自身のためにも、パートナーのためにも大切です。
改めて、「U=U」をもう少し詳しく言うと、「HIVに感染している人が治療を継続してウイルス量が抑えられ、検査で検出できない状態が6ヵ月以上続いていれば、性行為で感染するリスクはゼロ」という事になります。これは、近年の国際的な研究によって、科学的に裏付けられています。
たとえHIVに感染しても、適切な治療を続ければ性生活も含めて普段通りの生活を送ることができます。このことは、HIV陽性の方の不安を取り除き、さらには社会にまだ残っているHIVを巡る差別や偏見をなくすことにも繋がります。
世界の状況
今、世界では、治療薬やPrEPの普及など、様々な取り組みが行われ、新たな感染が減ってきています。
2022年の世界における新規HIV感染者は130万人で、1995年のピーク時と比べると、59%減少しました。
また、治療によってエイズで亡くなる人も減少したため、HIVに感染している人は、3,900万人(推計)と増えています。
日本が含まれるアジア太平洋地域は、アフリカに次いで、HIVに感染している人が多い地域です。
日本の状況
日本の新規感染者数は、新型コロナ感染症流行以降、減少傾向にあります。
2020年以降の新型コロナの流行期は保健所等での検査数が半減していたため、実際のHIV感染が減っているというより、十分に検査されていないのではないか、と心配されています。
最後に~ HIV/エイズについて
正しい知識と理解
HIV感染症/エイズは、性行為の経験がある方であれば、誰もが感染する可能性がある病気です。
STD研究所は、「HIV感染症/エイズ」について、皆さんに少しでも理解を深めていただくことで、ご自身と愛する人の健康を守り、そして陽性者の方々と共に助け合いながら暮らすことができる社会の実現を願っています。
みなさんの周りには、様々な病気を持たれながら生活をされている方もたくさんおられるのではないでしょうか。
今一度、ご自身の大切な人と一緒に、HIV感染症/エイズについて考える機会を持っていただければ嬉しく思います。