2018May
5月号
性病、
治療しないと
どうなるの?


気になる性病、
放っておいても大丈夫?
病院へ行くのは恥ずかしい、知り合いに会ったらどうしよう、内診台にのりたくない、症状も無いのに行けない、忙しい。
「性病かも…」と思っても、病院に行くのをやめる理由はたくさんあります。
確かにSTD(性病・性感染症)は、気軽に受診できる病気ではないかもしれません。
だから多くの人が、少しくらい不安に思っても「ま、いいか」とか「もう少し様子をみよう」なんて思って放置しているのではないでしょうか?
でも、本当にそれで良いのでしょうか。放っておいても大丈夫なのでしょうか?
そんなことはありません。
なぜ、STDを放っておくといけないのでしょうか。
今回は、主なSTDの症状と、放置したらどうなるのかをご紹介します。
STD(性病・性感染症)の
症状や長期的なリスクとは
クラミジアは、不妊症の原因に!
クラミジアは、最もポピュラーな性病(性感染症)です。
クラミジアの病原菌が尿道や腟から侵入し、性器やその周辺で炎症を起こします。
男性の症状としては、尿道の不快感や排尿時の軽い痛みや、サラサラした膿が出ることもあります。
女性の症状としては、おりものの増加や性交痛、不正出血という症状が挙げられます。
とは言えこれらの症状は軽いものばかりです。というより、クラミジアは「症状を感じない」ということが特徴。
そのため、多くの人が放置してしまいがちです。実際に、全く自覚症状が無かったため、妊婦健診で検査を受けて初めてクラミジアに感染していることが分かったという事例も多くあります。
しかし、放っておくと、クラミジアはどんどん体の奥へと進んでいきます。
その結果、男性では前立腺炎や精巣上体炎を引き起こし、性器の腫れや排尿が難しくなったり、発熱を伴うなどの症状が現れます。
また、女性の場合は、卵管や卵巣、骨盤腹膜などで炎症を起こします。
卵管で炎症が起きると、不妊症や子宮外妊娠の原因となり、女性の体や人生にとって大きな問題に結びつきます。
また、クラミジアに感染したまま出産すると、赤ちゃんが産道を通る時に赤ちゃんに感染します。目に入って結膜炎になったり、肺に入って肺炎をおこすこともあります。
淋病は、無精子症や不妊症の原因に
淋菌はクラミジアと似た病気で、淋菌が尿道や腟などの粘膜から侵入し、炎症を起こします。
症状も、クラミジアと同じような排尿痛やおりものの増加などですが、クラミジアよりも激しい症状が出るのが特徴です。
特に男性では排尿時の痛みが激しく、病院へ行かざるを得ない状況になるため、長期間放置されることは比較的少ないと思われます。
ただし、症状が出ない場合もあるため、やはり放置されてしまうこともあります。
放置すると、クラミジアと同じく体の奥へとどんどん進んでいきます。
その結果、男性は前立腺炎や精巣上体炎、完治しないと無精子症になることもあります。
また、女性は、卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)や肝周囲炎をおこします。クラミジアとの重複感染で不妊症の原因になる場合もあります。
淋菌に感染したまま出産すると、赤ちゃんに感染することがあります。赤ちゃんに感染すると、淋菌性結膜炎になります。
HIV/エイズは、数年~10年ほどかけて免疫力を破壊していきます
HIV/エイズは、免疫力が落ちていく病気です。
HIV(エイズウイルス)に感染すると、初期症状(発熱や喉の痛み、筋肉痛など)が出る場合もありますが、それらの症状は自然に治まり、その後数年~10年は無症状の期間が続きます。
初期症状はインフルエンザに似た症状なので、症状から「HIVかも…」と思うのは難しいかもしれません。
また、その後は無症状なので、自分で「感染したかもしれない」と思って検査を受けない限りは放置されてしまいます。
その間も、体の中では徐々に免疫細胞が壊されていきます。
治療の進歩により、現代では治療さえ受ければ、HIV/エイズで死ぬことはなくなりました。
しかし、治療しないと病気は進行していき、免疫力がなくなってエイズを発症します。
エイズにより免疫力が失われると、健康なら自然に治るような病気を発症し、場合によっては死に至るということは、現代でも何ら変わりありません。
梅毒の症状は進行すると全身に及ぶ
梅毒も、主要なSTD(性病・性感染症)の一つです。近年、感染者数が増加しており、ニュースなどで見聞きすることも多くなってきました。
梅毒は、皮膚や粘膜にイボや発疹などの症状が出るのが特徴です。
症状は、感染から3週間後、3ヵ月後、3年後のタイミングで症状が出るのですが、これらの症状は、放っておいても自然に消えてしまいます。
そのため、「治った」と思って放置されがちです。このことも感染が広がっている原因の一つと考えられます。
自然に症状が消えても、体の中では梅毒の病原菌が血液にのって全身に広がり、体をむしばんでいきます。
感染から3年後の第3期梅毒では大きなしこりができ、末期になると心臓、血管、神経、目などに思い障害が出ます。
現在は、抗菌薬(抗生物質)による治療で完治できるため、ここまで病気が進むことはほとんどありませんが、注意が必要です。
高リスク型HPVは子宮頸がんの原因
高リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸がんの原因とされますが、とてもありふれた存在のウイルスであり感染していること自体は問題ではありません。
実際に、女性の80%が一生に一度は感染を経験するとも言われています。
ほとんどの場合は、感染しても免疫力などによって体から排除されると言われています。
ただ、感染した人の1%以下で、感染が長く続いて細胞が異常な形に変化し(異形成)、最終的に子宮頸がんになります。
高リスク型HPVに感染しているだけでは症状は無く、子宮頸がんに進行して初めて不正出血などの症状がみられます。
しかし子宮頸がんになってからでは、子宮を摘出する手術が必要になる場合もあり、命にかかわることもあります。
だから、症状が無くても、定期的な検査で早い段階で対処することが大切なのです。
妊娠中の細菌性腟症は、早産や流産の原因にも
細菌性腟症は、普段体内にいる菌が過剰に繁殖し、炎症をおこす病気です。
約半数が無症状のため、やはり気づきにくいと言えます。
妊娠中に細菌性腟症にかかっていると、流産や早産の危険性が高まります。絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)といって、子宮口が柔らかくなり開いてきて、その結果早産になるといわれています。
もしかして…
と思ったその時がチャンス
このように、STD(性病・性感染症)は感染しても気づきにくい病気。
症状が無くても、病気は進行していき、将来大きな問題になったり、場合によっては死に至ることもあります。
だから、「もしかして…」と思った瞬間を絶対に逃さないでください。
そうは言っても、症状が全く無い場合や、違和感程度の場合、病院を受診するのは難しいと思うこともあるかもしれません。
そんな時は、郵送検査という方法もあります。
郵送検査は、検査キットを注文し、自分で検査物をとって郵送するだけで性感染症の検査ができます。都合の良いタイミングで受けたい方や、対面での検査が受けにくいという方にもおすすめの気軽に受けられる検査です。
結果、陰性(-)なら安心できますし、陽性(+)でも恥ずかしいことはありません。STDは誰にでも関係のある病気。陽性(+)が分かったということは、病気を放置せずにすんだということ。
ぜひ検査を受けることをポジティブにとらえていただき、陽性(+)の場合は、医療機関で治療を受けて、今後の予防につなげていってください。